実家の解体・売却前に思い出を残す|ハウストーリー(HOWSTORY)

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【代表コラム】解体の前日、家族で集まった日のこと。

Leoline 代表コラム

【代表コラム】
解体の前日、家族で
集まった日のこと。

こんにちは、株式会社Leoline代表の畠山琢です。別のコラム関連するコラムで、父の「帰るところがなくなった」という言葉や、解体業者さんに教えてもらえない選択肢のことを書いてきました。今日は、もう少し私的な、家族のあるひと晩の話をします。実家がなくなる前、最後に家族みんなが集まれた夜のこと。おばあちゃんはもういなくて、家だけが残っていた、あの夜のことを。
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「もう帰れないはずの家に、
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「解体の前日、家族で集まる」という発想は、たぶん遅い

このコラムのタイトルは「解体の前日、家族で集まった日のこと。」です。でも正直に言うと、解体の前日というのは、家族でゆっくり集まるには、ちょっと遅すぎるタイミングだと、僕は思っています。

解体の前日は、たいてい、バタバタしています。家財の最終処分、業者との連絡、近隣への挨拶、立ち会いの準備。そこに「家族で過ごす時間」を割り込ませるのは、現実問題として難しい。

本当に大事なのは、もっと前です。解体が決まる前か決まった直後、家がまだ「家として」立っているうちに、家族で一度ちゃんと集まること。これだけです。

僕の場合、それは、祖母が施設に入って、家がいったん空になった時期でした。

祖母のいない、生まれ育った家

祖母のテルが施設に入ったあと、苫小牧の家には、誰も住まなくなりました。長く誰かが住み続けてきた家が、急に空になる。これがどういう感じか、経験した方ならわかると思います。

誰もいないのに、家具はそのまま残っている。仏壇も、台所の鍋も、押し入れの布団も、全部そこにある。でも、住人がいない。家自体は息をしているのに、声がしない。

その時期に、家族で「一度集まろう」という話になりました。父、叔父、叔母、僕たちが、一晩、苫小牧の家に泊まる。祖母がいない家に、初めて家族で泊まる夜でした。

誰もいない家で、最後の宴会

あの夜のことを、僕はたぶん一生忘れません。

家族で食卓を囲んで、お酒を飲んで、話して、笑って。祖母がいないという事実は、もちろんみんなわかっていました。でも、その夜は、不思議と暗い感じにならなかったんです。むしろ、誰かが弾けたように、よく笑い、よく話した。

父が、子供の頃の話を始めました。家の前でだるまさんが転んだをやった話、近所で遊んだ話、台所でいつも何が出ていたか。父からそういう話を、僕はそれまでほとんど聞いたことがなかった。

叔父も口を開きました。叔母も。それぞれが覚えている、別々の家の話を。同じ家で育った三兄弟が、それぞれ別の風景を覚えていたんです。誰の記憶も、別の人の記憶を上書きしない。そこにいた一人ひとりの中に、別々の家があるんだなと、僕はあの夜、強く感じました。

あれは、お別れの宴会というより、ちゃんと「家族で家を看取る」夜だったんだと、今になって思います。

あの夜があったから、解体の日が変わった

そのあと、家は本当に解体されました。

でも、家族の中では、何かが少し違いました。喪失だけじゃなかったんです。みんな、あの夜の話をしていた。「あの夜、お父さんがあんなこと言ってたね」「叔父さんがあの台所の話、あんなに長くしたことなかったよね」。

解体の日は、悲しい日です。それは確かにそう。でも、悲しいだけの日にはなりませんでした。あの夜があったからです。

もし家族で集まる夜を持たないまま、解体だけが進んでいたら、たぶん家族は今より少し疎遠になっていたと思うんです。家がなくなって、つながりの中心も同時に失われて、お互いに連絡を取る理由が薄くなる。

でも、あの夜のおかげで、僕たち家族には共通の記憶ができました。父が話した昔の話、叔父が泣きそうになった瞬間、叔母が静かに笑った顔。家がなくなったあとも、あの夜のことを共有することで、家族は家族のままでいられたんです。

VRで残せたのは、家だけじゃなくて、あの夜の前後

あのとき僕は、家を撮っていました。VRの機材を持って苫小牧に行って、誰もいない家を歩いて記録した。

あとからわかったことですが、あの撮影自体が、家族にとっての「家を看取る準備」になっていたんですよね。「琢が記録しに来る」という名目で、家族が集まる理由ができた。誰もいない家で泊まる、という、普通だったらやらないことをやれた。

VRに残ったのは、家の空間そのものです。でもその空間に紐づいて残ったのは、あの夜、家族で過ごした時間でもあります。VRの中の家を見ると、あの夜の記憶も一緒に戻ってくるんです。父も叔父も叔母も、たぶん同じ感覚を持っているんじゃないかと思います。

失われるはずだった家が、
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失われるはずだった家が、
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家族で集まれる夜は、家がある間にしか作れない

解体が決まっているご家族に、強くお伝えしたいことがあります。

解体の前日にバタバタしながら集まるんじゃなくて、できればもっと前に、何でもない夜を、家族で家で過ごす時間を作ってほしいんです。一泊でいい。お酒を飲むでもいい、何かをするでもいい、ただいるだけでもいい。

家がそこにあるうちに、家族みんなで一度ちゃんと家に集まる──これは、家がある間にしか作れない時間です。家がなくなってから「あの家でみんなで一晩過ごせばよかった」と気づいても、もう取り戻せません。

家族の中に、まだ「行こうよ」と声をかけ合える距離感が残っているうちに。そして、家がまだ立っているうちに。何でもない一晩を、ぜひ作ってください。

もし、その夜のために、空間記録という選択肢があるなら

「家族で集まろう」と、ただ呼びかけるのは、案外むずかしいものです。みんな、それぞれの生活がある。理由がないと、わざわざ実家に集まる予定なんて立たない。

そういうとき、空間記録という名目は、わりと使いやすい口実になります。「家を撮るから、その日に集まろう」──これだけで、家族が集まる理由ができる。記録するために来てもらうんだけど、本当の目的は、家族が一晩、家にいる時間を作ること。

僕がVRの撮影に伺うとき、ご家族で立ち会われる方が多いんです。撮影中、ご家族はその場で、いろんなことを思い出して話しはじめる。「ここでよくこうしてた」「あの押し入れに何があった」と。撮影は、家族の記憶を引き出す時間でもあります。

もしいま、ご実家の解体を控えていて、家族で一度ちゃんと集まる理由を探しているなら、空間記録を口実にしてもらってもいいんです。話を聞くだけでも構いません。「撮っておいたほうがいい気がする」──その感覚のままで、相談してもらって大丈夫です。

株式会社Leoline代表 畠山 琢

畠山 琢(はたけやま たく)
株式会社Leoline 代表取締役
北海道を拠点に、解体前の住宅・歴史的建造物・乗り物などの空間記録を手がける。JR北海道、北海道新幹線、日本航空大学校、札幌市路面電車など、「二度と同じ状態では撮れない」空間の記録実績多数。「資産を守り、育て、生かす」をミッションに掲げる。
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