実家を壊したくない…その気持ちは間違ってない
結論:「壊したくない」は感傷ではなく、正当な感情です
「壊したくない」気持ちを「未練」「合理的でない」と評価する声に出会うと、自分の感じ方を否定したくなるかもしれません。けれど、解体や空間記録の現場で多くの家族と接していると、この気持ちが湧くのには明確な理由があると分かります。
感情論ではなく、理由のある正当な気持ちとして3つを整理します。
「壊したくない」が湧く3つの正当な理由
理由①:家は資産ではなく「家族の物語の器」だから
家は不動産という側面と、家族の物語が積み重なった器という側面の両方を持っています。固定資産税の対象としてだけ捉えれば「壊した方が合理的」という結論になりやすいのですが、物語の器という側面は数字では測れません。「壊したくない」と感じるのは、後者の側面を尊重している証拠です。
理由②:解体は「不可逆な選択」だから
家は壊したら戻せません。リフォームも売却も賃貸も、判断を間違えてもやり直す余地があります。解体だけが、二度と取り戻せない選択です。不可逆な選択ほど時間をかけて慎重に判断するのは、人として真っ当な感覚です。「壊したくない」は、その慎重さの表れでもあります。
理由③:解体以外の選択肢が複数あるから
「壊すか維持するか」の二択で考えがちですが、実際には選択肢はもう少し広いものです。空き家として残す、売却して他人に住んでもらう、リフォームして賃貸に出す、自分や子どもが住む、解体する――最低でも5つの選択肢があります。「壊したくない」気持ちは、選択肢を全て検討する前に解体を選ばないでほしい、という心の声でもあります。
壊さずに済む3つの選択肢
具体的に、壊さずに残す道として現実的なのは次の3つです。それぞれにメリットとデメリットがあるため、自分の状況に合うかを照らし合わせて検討します。
選択肢①:空き家として維持する+管理サービスを使う
固定資産税と管理費はかかりますが、家を保持できます。月数千円〜の空き家管理サービス(定期巡回・通気・草取りなど)を契約すれば、遠方住みでも維持しやすくなります。「いずれは決断する」までの猶予を作る選択肢です。
選択肢②:解体せずに売却する
家は古くても、立地や用途によっては現状のまま売れることがあります。次の家族が住む可能性があり、家としての物語は別の形で続きます。家が「自分のもの」ではなくなる違和感はありますが、消えることはない選択です。
選択肢③:リフォームして賃貸 or 自分が住む
リフォーム費用と立地条件次第ですが、賃貸物件として再生させる、または自分か子どもが住む、という道もあります。家が活用され続けるため「壊したくない」気持ちと最も相性が良い選択肢ですが、初期投資が大きい点には注意が必要です。
「いずれ壊す」と「今壊す」は違います
3つの選択肢のどれを取ったとしても、いつかは解体に至ることが多いものです。けれど、「いずれ壊す」と「今壊す」は心理的な意味が大きく違います。「いずれ壊す」は時間と選択肢を経た後の決断で、「今壊す」は気持ちの整理が間に合っていない決断になりがちです。1〜3年の猶予を取って選択肢を試すことで、後の納得感が変わります。
このテーマをもっと深く知りたい方は、空き家になった実家、壊す前に考えてほしいこと(教科書)に、5観点(経済・法務・感情・活用・記録)から壊す前に検討すべきことが詳しく整理されています。
まとめ:「壊したくない」気持ちを起点に選択肢を広げて構いません
「壊したくない」気持ちは、家族の物語を大事にしている証拠であり、不可逆な選択への慎重さの表れであり、選択肢を狭めないでほしいという心の声です。感情を起点に選択肢を広げるのは、合理的な進め方とも矛盾しません。すぐに結論を出さなくて大丈夫です。
ハウストーリーは、株式会社Leolineが運営する、実家じまいや解体前のVR空間記録に関する情報メディアです。「壊す」の前に「残す」という選択肢があることを、一人でも多くの方に届けたくて続けています。
監修:畠山 琢(株式会社Leoline 代表取締役)/制作:ハウストーリー編集部