実家じまいが寂しい…
始める前に知っておいてほしいこと
実家じまいが寂しいのは、当たり前のことです
「実家じまい」という言葉を聞いて、最初に湧くのが寂しさだとしたら、それは正常な反応です。実家じまいに関する情報サイトの多くは、手続き・相続・費用といった実務面ばかりを扱っています。けれど実際に実家じまいを始めようとする人が、最初に直面するのは寂しさという感情の壁です。
「寂しさを感じない方が珍しい」と知ってほしい
長く実家を離れて暮らしていた方、ほとんど帰省していなかった方も、いざ「実家を片付けて家ごと処分する」となると、想像していなかった重さの感情に押されることがあります。家族の歴史、自分という人間が形作られた時間と空間、それらが「終わる」と決まった瞬間に、感情が動かないほうが不自然です。寂しさを感じない方が珍しいくらいです。
寂しさは「実家じまいの障害」ではない
「寂しいと進められない」「感情があると判断が鈍る」と思って、寂しさを抑え込もうとする方が少なくありません。けれど実家じまいの現場では、寂しさを感じている方ほど、その後の整理を丁寧に進められる傾向があります。寂しさは進めることの障害ではなく、「ここまで自分にとって大切な場所だったのだ」というサインです。それを認めるところから、実家じまいは始まります。
実家じまいの「寂しさ」の正体は、4つの感情に分けられる
「寂しい」と一言で表される感情は、実は4つの異なる感情が同時に起きている状態です。これらを分けて理解すると、「自分は何を失う気がしているのか」が見えてきます。
1. 家がなくなる寂しさ(場所そのものの消失)
もっとも直感的に分かりやすい感情です。実家の建物、子どもの頃の部屋、台所、玄関、庭、それらが物理的に消えることへの寂しさ。これは目に見える消失なので、心の準備もしやすい一方、現実として手放す段階で強い悲しみが湧きます。
2. 家族の歴史が消える寂しさ(時間の消失)
実家には、家族で過ごした時間、年末の食卓、誰かの誕生日、子どもの頃の風景、ペットの記憶など、無数の出来事が紐づいています。家を手放すということは、それらの「時間の容れ物」を失うことです。記憶そのものが消えるわけではありませんが、記憶を呼び戻すフックが目の前から消える感覚に近いです。
3. 親が老いる寂しさ(時の流れの実感)
実家じまいは多くの場合、親が施設に入る・亡くなる・介護が必要になる、といった親の人生の節目とセットで起きます。家じまいそのものよりも、「親が次の段階に進んでいる」という事実を突きつけられる側面があります。これは家を失うことそのもの以上に、心に静かに重く沈む寂しさです。
4. 自分の「帰れる場所」が消える寂しさ(アイデンティティの揺らぎ)
普段ほとんど帰省していなかったとしても、「帰ろうと思えばいつでも帰れる場所がある」という感覚は、心の支えとして機能していました。それが消えると、自分のアイデンティティや「自分はどこから来たか」という根の感覚に、薄い不安のような空白が生まれます。これは多くの方が言葉にできないけれど、確実に感じる種類の寂しさです。
4つの感情は同時に起こるので、「実家じまいは寂しい」という単純な言葉では説明しきれない複雑さを抱えます。心理メカニズムをもう少し深く知りたい方は、思い出の場所がなくなるとき、人の心に何が起きるか(教科書)もあわせてお読みください。
始める前に、家族で「寂しさを言葉にする時間」を取る
実家じまいを始める前に、最初に取り組んでほしいのが「家族で寂しさを言葉にする時間」を作ることです。実務に入る前に、感情を共有する場を一度持つだけで、その後の進めやすさが大きく変わります。
なぜ最初の話し合いが大事なのか
実家じまいでは、業者選び・相続・費用負担・遺品整理など、決めることが山ほどあります。これらの実務を進める途中で「兄弟の意見が合わない」「親が頑固に動かない」と揉めるケースが多いのは、最初に「それぞれが何を感じているのか」を共有していないことが大きな原因です。
話し合いで聞くべき3つのこと
1つ目:「あの家がなくなることで、自分は何を失う気がしているか」。感情そのものを言葉にしてもらいます。2つ目:「自分にとって、絶対に残しておきたいものは何か」。物理的なものでも、感覚的なものでもOKです。3つ目:「実家じまいで、いちばん不安なことは何か」。費用なのか、感情なのか、家族関係なのか、それぞれ違って当然です。
「正解は一つじゃない」と全員で確認する
家族の中で、実家じまいへの感じ方は必ず違います。長男が「寂しすぎて何もしたくない」と言うのに対して、次男は「実務的に進めたい」と思い、母は「思ったより平気」と言う。これは誰も間違っていません。それぞれが違う感情と向き合っているだけです。最初の話し合いで「正解は一つじゃない」と全員で確認しておくと、後の意思決定で互いを否定せずに済みます。
「物」と「空間」を分けて考える
実家じまいで「残すもの」を考えるとき、多くの方は「物」だけを考えます。けれど実家には、物では運べない「空間」というもう一つの軸があります。
「物」は持ち帰れる、「空間」は持ち帰れない
遺品、家具の一部、写真、思い出の品。これらは「物」として家から持ち出せます。けれど、家の間取り、光の入り方、廊下を歩いたときの感覚、台所の窓からの景色、玄関を開けたときの匂い。これらは「空間」であって、物理的に持ち帰ることができません。多くの方が後で「あの空間そのものが懐かしい」と気づきます。
物の整理だけで終わらない実家じまい
「物の整理」は実家じまいの一部であって全部ではありません。「空間としての家」をどう残すか・どう手放すか、という側面を意識的に考えないと、実家じまいの後に「物は片付けたけど、何かが整理しきれていない」という感覚が残ります。
空間記録という新しい選択肢
近年、家を360度3Dスキャンで丸ごと記録するVR空間記録という方法が広がっています。これは「空間」のほうを残す手段で、間取り・光の入り方・家具の配置・日常の小物まで、家そのものをデジタル空間として残せます。実家じまいで「空間も残したい」という方が選べるようになった新しい選択肢です。詳細は家の思い出を残す方法まとめ|写真・動画・VR徹底比較(教科書)を参照してください。
「やる」「やらない」を、知ったうえで決められる側に立つ
実家じまいで後悔しないためには、選択肢の全体像を知ってから決めることが何より大切です。
全選択肢を知ってから決める意義
「写真は撮った」で済ませて実家じまいを終えると、後で「VRで残せたのか」「家族で集まる日を作れたのか」と気づいて後悔することがあります。逆に、全部の選択肢を知ったうえで「うちは写真と動画でいい」と決めたのなら、それは納得のいく選択です。後悔の質は、選択肢を知っていたかどうかで決まります。
「選ばなかった」と「選べなかった」の違い
「VRで残すなんて選択肢を知らなかった」「家族で集まる時間を取れたなんて、終わってから知った」というのは、知らなかったことの結果として失った状態です。これは後で「選べなかった」の重さを背負うことになります。一方、「全部知った上で、自分はこれを選んだ」と言える状態なら、後悔は質的に軽くなります。このページに辿り着いた方は、すでに「選択肢を知ろう」とする側に立っています。
実家じまいは、まだ家がある間だけにできる準備が多い
実家じまいの準備の中には、「家があるうちにしかできないこと」が意外と多くあります。これらを後回しにすると、後から取り返しがつきません。
解体決定後では取り戻せないこと
家族で集まって過ごす時間、家の中の各部屋を最後にゆっくり歩く時間、日常の風景を写真や動画で撮る時間、VRで空間を記録する時間。どれも「家がそこにある」ことが前提です。解体が決まってからの数週間〜数ヶ月は、後から振り返ったときに「あの時行っておいてよかった」と最も思える時間になります。
今の家で過ごす時間そのものが資産
大袈裟な記録や儀式をする必要はありません。台所で何かを作る、リビングで子どもの頃の話をする、庭でぼんやり過ごす。そういう日常の時間こそが、実家がなくなった後に最も思い出として残ります。「行ける間に、行っておく」を行動指針として持っておくだけで、後悔の質が大きく変わります。
寂しさを抱えながら進める、家族での意思決定
実家じまいでもう一つ大事なのが、家族での意思決定をどう進めるかです。寂しさを抱えた状態だと、判断が遅れたり、揉めやすくなったりします。
全員一致は無理だと前提を置く
家族全員が同じ気持ち・同じ判断にたどり着くことは、まずありません。誰かが「もう手放したい」と思い、誰かが「もう少し残したい」と思う。これは普通のことです。最初から「全員一致は目指さない」「多数で決めることもある」と前提を置いておくと、進めやすくなります。
「決める人」と「補佐する人」を決める
多くの実家じまいで、家族の誰か一人(多くは長男・長女)が中心になって進めることになります。「決める人」と「補佐する人」を最初に決めておくと、責任の所在がはっきりして、後の不満が出にくくなります。中心になる人が一人で抱え込まないよう、補佐側の役割も明確にしておくのがコツです。
揉めそうな論点を先に洗い出す
実家じまいで揉めやすい論点はだいたい決まっています。費用負担の割合、遺品の取り合い、解体か売却か、誰がどこまで関わるか、といったところです。これらを最初に洗い出して、「ここは揉めそうだから、最初に話し合おう」と意識しておくと、後で爆発するリスクを減らせます。
実家じまいの後で、寂しさが続く方へ
実家じまいが終わってからのほうが、寂しさが強くなる方が少なくありません。これも自然なプロセスです。
終わってからのほうが辛い人もいる
進めている間は実務の慌ただしさで気持ちが整っているように見えても、実家じまいが完了してしばらく経った頃に、強い感情が押し寄せてくることがあります。「もう終わったのに、なぜまだ」と自分を責める必要はありません。心は時間差で追いついてくるものです。代表コラムの「寂しい」は消えない。でも「帰れる」は残せる。(代表コラム)でも、この感覚が綴られています。
「忘れる」のは目的じゃない
寂しさを「早く忘れる」ことを目標にしないでください。実家の存在は、自分の人生にとって大きなものでした。寂しさを抱えたまま、新しい日常を作っていく。それが多くの方が辿るプロセスです。寂しさは消えなくていい。むしろ、その寂しさが「ここまで自分にとって大切な場所だったのだ」という、人生を深くする栄養になっていきます。
まとめ:実家じまいを始める前に覚えておいてほしいこと
実家じまいが寂しいのは、当たり前のことです。その寂しさは、場所の消失・時間の消失・親の老い・「帰れる場所」の消失という4つの感情が同時に起きている状態です。一つずつ自分の感情に気づき、家族で言葉にしていくことが、最初の一歩になります。
実家じまいでは「物」だけでなく「空間」も意識的に考えてください。家がまだある間にしかできない準備が、思っているより多くあります。家族で集まる時間、最後の景色を見る時間、空間そのものを記録する時間。これらは後から取り戻せません。
家族での意思決定では、全員一致は最初から目指さなくて大丈夫です。寂しさの感じ方は人それぞれです。「決める人」と「補佐する人」を決めて、揉めそうな論点を先に洗い出しておくと、進めやすくなります。
実家じまいが終わったあとの寂しさも、消そうとしないでください。寂しさを抱えたまま、新しい日常を作る。実家は、心の中では消えません。物理的には失われても、自分のアイデンティティの一部として、これからも生き続けます。
このページに辿り着いた方は、すでに「実家じまいを丁寧に進めたい」という気持ちで情報を集めています。それは寂しさを大事にしながら進める側、つまり後悔の少ない側に立つ最初の一歩です。あとは、自分のペースで、必要な準備を少しずつ進めていってください。
ハウストーリーは、株式会社Leolineが運営する、実家じまいや解体前のVR空間記録に関する情報メディアです。「壊す」の前に「残す」という選択肢があることを、一人でも多くの方に届けたくて続けています。
監修:畠山 琢(株式会社Leoline 代表取締役)/制作:ハウストーリー編集部

