実家の解体・売却前に思い出を残す|ハウストーリー(HOWSTORY)

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空き家になった実家、壊す前に考えてほしいこと|じっくり考える 実家じまいの教科書

じっくり考える 実家じまいの教科書

空き家になった実家、
壊す前に考えてほしいこと

親が施設に入った、亡くなった、住む人がいなくなった――。実家が空き家になったとき、多くの人が「いつ解体するか」を最初に考えます。けれど、空き家のうちにしかできない判断と、空き家だからこそ持てる選択肢があります。この記事では、解体を決める前に検討してほしい5つの観点(経済・法務・感情・活用・記録)と、空き家のうちに取り組めることを整理します。すぐ結論を出さず、立ち止まって考える時間を持ってください。
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「もう帰れないはずの家に、
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空き家になった実家を、すぐ解体する必要はない

親が施設に入った、亡くなった、引っ越して住む人がいなくなった――。そうやって実家が空き家になったとき、多くの人が最初に考えるのは「いつ、どう壊すか」です。固定資産税の優遇がなくなる話を聞き、近所への気遣いもあり、「早く処分しないと」という焦りに押されて解体の話が進んでいきます。

けれど現場で繰り返し出会うのは、解体してから「もっと考えればよかった」と振り返る人たちです。空き家のまま少し時間を置いていれば、別の選択肢が見えていたかもしれない。家族の心の整理がもっとついていたかもしれない。空き家のうちにできたことが、解体後にはもうできなくなる。そんな後悔は、想像よりずっと多いのです。

「空き家=負債」だけではない

空き家は確かに維持費がかかり、放置すれば法的なリスクも生まれます。けれどその一方で、空き家であるからこそ持てる時間と選択肢があります。「壊す」までの間にしかできない判断、家族で話し合う時間、家を残す方法の検討――これらは家がそこにある間にしか得られないものです。

急いで決めて後悔した人と、立ち止まって決めた人の差

空き家を持った家族の中で、半年〜1年「保留」する時間を持った方々は、その後の判断に納得感を持っている傾向があります。逆に、相続の慌ただしさや周囲の声に押されてすぐ解体を決めた方々は、数年後に「あのときの判断は早すぎた」と振り返ることが少なくありません。差は判断の良し悪しではなく、「考える時間を持てたかどうか」にあります。

空き家を「壊す前」に考えてほしい5つのこと

空き家になった実家を解体する前に、立ち止まって整理してほしいのが次の5つの観点です。それぞれ独立して考える価値があり、5つすべて検討してから判断すれば、後悔の質が大きく変わります。

5つの観点の全体像

① 経済面:固定資産税・維持費・解体費・売却益など、お金の現実
② 法務面:相続登記・空き家対策法・特定空き家のリスク
③ 感情面:家族にとっての「帰れる場所」の意味
④ 活用面:解体以外の選択肢(賃貸・売却・無償譲渡など)
⑤ 記録面:壊すと決めた場合でも、その前にしか残せないものがある

順番に意味がある

この5つは、上から順に検討していくのが自然です。最初に経済と法務という「動かしにくい現実」を把握し、次に感情・活用・記録という「自分たちで選べる領域」に進みます。経済面だけで判断して感情面を後回しにすると、解体後に揺り戻しが来やすくなります。

① 経済面:「空き家のまま=損」とは限らない

空き家を急いで処分しようとする人の多くが、「空き家のままだと固定資産税が6倍になる」「維持費が延々とかかる」というイメージを持っています。これは半分本当で、半分誤解です。

固定資産税は条件付きで6倍になる

住宅用地の特例で、家が建っている土地は固定資産税が最大1/6に軽減されています。家を解体すると更地になり、この特例が外れて固定資産税が約6倍になる、というのが「6倍」の正体です。つまり「空き家を残しているうちは特例が継続している」ので、空き家のまま放置すること自体は税金面で得になっているケースが多いのです。

例外は、自治体から「特定空き家」に指定されたケース。倒壊リスク・衛生問題・景観上の問題があると判定されると、特例から除外されて固定資産税が上がります。ただし指定されるには段階的な行政指導があり、いきなり「特定空き家」になるわけではありません。

維持費の現実:年間いくらかかるか

空き家の維持費は、固定資産税・火災保険・水道光熱基本料・草木の手入れ・点検費などを合わせて、年間10万〜30万円が目安です。これを高いと見るか安いと見るかは、家族の状況によります。「家族で集まる場所」「思い出の場所」としての価値が10万〜30万円/年を上回るなら、すぐ解体する経済合理性は薄くなります。

解体費の相場と、解体後の売却益

木造住宅の解体費は、坪あたり3万〜5万円が目安。30坪の家なら100万〜150万円。これに加えて、外構の解体・廃材処理・整地で追加費用がかかります。解体後に土地を売却するとしても、立地によっては解体費を引いて手元に残る額が想定より少ないケースが珍しくありません。経済面だけで「すぐ解体」を選ぶ前に、実際の収支を試算することが大切です。

② 法務面:知らないと損する3つのリスク

空き家を持っている間にも、法務面で知っておくべきポイントがあります。これらを知らないまま「とりあえず空き家のまま」にしておくと、別のリスクが生まれます。

相続登記の義務化

2024年4月から、相続による不動産の登記が義務化されました。相続を知ってから3年以内に登記しないと、最大10万円の過料が課される可能性があります。空き家を相続したけれど登記をしていない、というのは早めに解消しておくべき状態です。

空き家対策特別措置法と「特定空き家」

空き家対策特別措置法に基づき、自治体は管理不全な空き家に対して指導・勧告・命令を出せます。「特定空き家」に指定されると、固定資産税の特例が外れる、改善命令に従わなければ強制執行(行政代執行)される、というステップがあります。ただしいきなり指定されるわけではなく、まずは「管理不全空き家」として勧告を受け、それを無視した場合に「特定空き家」になる流れです。

近所トラブルの法的責任

空き家から物が落ちて隣家に被害を与えた、雑草が伸びて隣の敷地に侵入した、といった場合、所有者に法的責任が発生します。年に数回の見回りや、最低限の手入れを怠っていると、思わぬトラブルに発展することがあります。空き家を維持するなら、最低限の管理は必要です。

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③ 感情面:家族にとっての「帰れる場所」の意味

経済と法務を整理したら、次に向き合うのが感情面です。「実家がそこにある」ということが、家族にとってどれだけの意味を持つのか――これは数字では測れません。

「帰れる場所」が支えていたもの

普段ほとんど帰省していなかったとしても、「帰ろうと思えばいつでも帰れる場所がある」という感覚は、心の支えとして機能しています。空き家になった実家は、まだその役割を果たせる状態です。解体すると、その役割が永遠に終わります。

このテーマは、代表コラムの空き家になった実家を、まだ「帰れる場所」にする方法(代表コラム)に、もっと現場の温度感を含めて書かれています。

家族で温度差があるのは普通

「すぐ処分したい」という人と、「もう少し残しておきたい」という人。家族の中で意見が割れることは、ごく普通の状況です。どちらが正しいのではなく、それぞれが違う関係性で家と関わってきたからです。話し合いの場では、急いで結論を出さず、それぞれの感覚を言葉にする時間を取ることが大切です。

「もう少し置いておく」は弱さじゃない

「空き家のまま置いておくのは決断できていないだけ」と感じる人もいます。けれど、すぐ決められないのは、家族にとって大切な場所だからこそです。判断を保留することそのものが、感情の整理の必要なプロセスでもあります。

④ 活用面:解体以外の5つの選択肢

「空き家=解体」と決めつける前に、解体以外の選択肢が5つあることを知っておいてください。地域や状況によっては、解体より良い結果になる場合があります。

1. 賃貸(リフォームして貸す)

立地が良ければ、リフォームして賃貸に出すのは現実的な選択肢です。家賃収入が固定資産税・維持費を上回れば、実質的に「お金を生む空き家」になります。ただし、リフォーム費用と家賃の見込みは慎重に試算する必要があります。

2. 売却(土地のみ or 中古住宅として)

解体せずに「中古住宅付き土地」として売却する方法もあります。買い手が住むつもりなら、解体せずに売れることが多いです。逆に、買い手が更地での購入を希望する場合は、解体費を売主が負担するか、買主と分担することになります。

3. 無償譲渡・空き家バンク

地方の空き家であれば、自治体の「空き家バンク」に登録して買い手を探したり、無償で譲渡する選択肢もあります。マッチング次第で、解体費用をかけずに次の所有者に引き継げるケースがあります。

4. 民泊・コミュニティ拠点

立地と建物の状態によっては、民泊や地域のコミュニティ拠点として活用する道もあります。地域おこし関連の補助金が使える場合もあるので、地元の自治体に相談してみる価値があります。

5. 一定期間「凍結」

すぐ決めずに、3年〜5年ほど空き家のまま「考える時間」として残しておく選択肢もあります。最低限の管理さえ怠らなければ、選択肢を保ったまま家族の心の整理を進められます。

⑤ 記録面:壊す前にしか残せないものがある

5つの観点を検討した結果、解体する判断になったとしても、その前に必ず考えてほしいのが「記録」です。空き家のうちにしかできない記録の方法があります。

写真・動画で残せるもの・残せないもの

写真は瞬間を、動画は流れを残せます。けれど、家の間取り、光の入り方、廊下の幅、玄関を開けたときの感覚――これらは写真と動画では残しきれません。

VR空間記録という選択肢

近年、家を360度3Dスキャンで丸ごと残す「VR空間記録」という方法が広がっています。家の中を歩き回るように後から見られるので、写真や動画では残せない空間そのものが記録できます。これは家がそこにある間にしか撮影できません。詳しくは家の思い出を残す方法まとめ|写真・動画・VR徹底比較(教科書)を参照してください。

「整えてから撮る」のはもったいない

記録を残すとき、「綺麗にしてから撮ろう」と片付けてから撮ると、それは「片付いた家」であって「家族が暮らしていた家」ではなくなります。空き家のうちは、暮らしの名残がまだ残っています。整える前に、暮らしのままの状態を記録するほうが、後で見返したときに思い出として響く力が強くなります。

「空き家のうちにしかできないこと」一覧

空き家のままの期間に、家族で取り組める「家がある間限定」のことを整理しておきます。これらは家を解体すると、二度とできません。

家族で集まる時間を作る

空き家であっても、家族で集まって過ごす時間は持てます。「家じまい合宿」のように半日でも一日でも、家の中で過ごす時間を共有することは、後の判断にも心の整理にも大きく効きます。

家の中の物を時間をかけて整理する

急ぎでない状況なら、遺品や家財の整理を時間をかけて丁寧にできます。「どれを残し、どれを手放すか」を家族で話しながら整理する時間は、解体直前の慌ただしさでは取れません。

近所への挨拶や地域の歴史の継承

近所の方々や地域に、その家・その家族が地域に残してきたものを伝える時間も持てます。これは家がそこにある状態だからできる、地域との「お別れ」の準備です。

記録を残す

VR空間記録、写真、動画、家族のエピソードを文字に残すなど、記録という形で家を残す作業ができます。これは前述の通り、空き家のうちにしかできません。

それでも解体を選ぶなら、後悔しない判断軸

5つの観点を検討した結果、やはり解体が最善という判断になることもあります。その場合に大切なのは、「他の選択肢を知ったうえで、自分たちでこれを選んだ」という能動性です。

「選ばなかった」と「選べなかった」の違い

解体や空間記録の現場では、繰り返し言われることがあります。「選ばなかった」と「選べなかった」は、まったく違う言葉だ、と。すべての選択肢を知った上で「自分たちはこれを選ぶ」と決めたのなら、その判断には納得感が伴います。逆に、選択肢を知らないまま「とりあえず解体」を選ぶと、後で「もっとあったのか」と後悔することになります。

解体前のチェックリスト

解体を決めたなら、解体前に取り組むべきことを後悔しない実家じまいのために解体前にやるべきこと(教科書)に7ステップでまとめています。あわせて確認してください。

家族の合意を、もう一度確認する

解体は不可逆な決断です。家族の中で温度差があるなら、解体日の直前にもう一度、全員で「これでいいか」を確認する場を持つことをおすすめします。一人でも強い違和感を持っている人がいれば、もう少し時間を置く判断もあり得ます。

まとめ:壊す前に、もう一度立ち止まって

空き家になった実家を解体する前に、考えてほしいのは5つの観点です。経済面・法務面・感情面・活用面・記録面――それぞれを順番に検討してから判断すれば、後悔の質が大きく変わります。

「空き家=損」とは限りません。固定資産税の特例は空き家のうちは続いており、家がそこにあるからこそ家族が「帰れる場所」を保てます。解体以外にも賃貸・売却・無償譲渡・民泊・凍結といった選択肢があり、地域や状況によっては解体より良い結果になることもあります。

そして、解体すると決めた場合でも、その前にしか残せないものがあります。家族で集まる時間、丁寧に整理する時間、VR空間記録での「家を丸ごと残す」記録――これらは家がある間にしかできません。

このページに辿り着いた方は、すでに「すぐ決めずに考えたい」という気持ちで情報を集めています。それは「選ばなかった」を選べる側に立つ最初の一歩です。あとは、自分の家族と状況に合わせて、必要な観点から少しずつ整理していってください。「壊す前に立ち止まる時間」を取ることそのものが、いちばん大きな価値を生みます。

ハウストーリーは、株式会社Leolineが運営する、実家じまいや解体前のVR空間記録に関する情報メディアです。「壊す」の前に「残す」という選択肢があることを、一人でも多くの方に届けたくて続けています。

監修:畠山 琢(株式会社Leoline 代表取締役)/制作:ハウストーリー編集部

監修 畠山 琢(はたけやま たく)
株式会社Leoline 代表取締役
解体前の住宅・歴史的建造物・乗り物などの空間記録を全国で手がける。JR北海道、北海道新幹線、日本航空大学校、札幌市路面電車など、「二度と同じ状態では撮れない」空間の記録実績多数。「資産を守り、育て、生かす」をミッションに、家族が「選ばなかった」と納得できるように選択肢そのものを届けることを仕事にしている。
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