実家の解体・売却前に思い出を残す|ハウストーリー(HOWSTORY)

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【代表コラム】解体業者が教えてくれない、本当に大切なこと。

Leoline 代表コラム

【代表コラム】
解体業者が教えてくれない、
本当に大切なこと。

こんにちは、株式会社Leoline代表の畠山琢です。実家の解体を考えはじめると、まず最初に連絡するのは、たぶん解体業者です。見積もりを取って、日程を決めて、見送って終わり。流れだけ見れば、それで間違ってはいません。でも、僕がこの仕事をしていて、いちばん歯がゆく感じるのは、その間に「もう一つ、検討してもいい選択肢があった」と、解体が終わったあとに気づく人が、本当に多いことなんです。
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解体業者は、解体のプロです。それ以上でも、それ以下でもない

誤解しないでほしいんですが、解体業者を批判する気は、まったくないです。

彼らは、家を安全に、効率よく、適正な費用で取り壊してくれる、専門家です。重機の扱いも、廃材の処理も、近隣への配慮も、僕にはとても真似できないプロの仕事です。畠山家の解体も、業者さんに本当によくしてもらいました。

ただ、ひとつだけ知っておいてほしいことがあります。解体業者は、家を「残す方法」を案内する立場ではありません。当たり前ですが、彼らの仕事は壊すことだから。だから「壊す前に、こんな残し方もありますよ」とは、誰も言ってくれないんです。

不動産屋さんも、リフォーム会社も、片付け業者も、お役所も、同じです。みんな自分の専門領域のことを案内してくれる。そして、誰も、空間を歩ける形で残すという選択肢を、案内してくれません。なぜなら、その選択肢自体を、まだほとんどの人が知らないからです。

「知らなかった」と「選ばなかった」は、まったく違います

僕がこの仕事を続けている、いちばん深い理由はここにあります。

残すという選択肢を知っていて選ばなかったのと、知らないまま選べなかったのとでは、まったく違います。

知っていて選ばなかったなら、それは納得です。検討した上で「うちはやらなくていい」と判断したのなら、後悔は残りません。

でも、そもそもその選択肢があることを誰からも教えてもらえないまま解体が終わって、更地になったあとで「そんな方法があったの?」と気づいたとき──人は、もう取り返しのつかないところまで来ています。選ばなかったんじゃなくて、選ぶ機会さえなかった。これが、いちばん残酷なんです。

「あの台所、もう一度だけ見たかった」と泣いた人がいた

僕が話をした方の中に、こんな人がいました。お父さんが亡くなって、空き家になった実家を、業者に任せて解体したあとの方です。

「畠山さん、もっと早くこういうのがあるって知ってたら、絶対に頼んでた。お父さんがいた台所、もう一度だけでいいから歩いてみたかった」

声を詰まらせながら、そう話してくれました。

その方を責める人は、誰もいません。何も間違っていない。普通に、ちゃんと、業者を選んで、家を片付けて、解体した。手順としては完璧でした。

ただ、誰もその方に「壊す前に、空間を残すという選択肢があります」と教えなかった。その情報の欠落だけで、その方は一生、台所に戻れなくなったんです。

解体の前に、たった30分でいいから、立ち止まってほしい

業者の見積もりを取って、解体の日程まで決まっている。もう全部、進んでしまっている。そういう状態の方も、たくさんいると思います。

それでも、お願いしたいんです。工事が始まるまでに、たった30分でいいから、立ち止まってください。

あの家の、台所の景色。廊下の長さ。窓から見える庭。お父さんがいつも座っていた席の、目線の高さ。お母さんが料理をしていた、コンロの前の空間。これらが本当に永遠に消えてしまっていいのか、自分の中で一度確かめてほしいんです。

「うん、もう写真もあるし、十分」と思えるなら、それで全然いいんです。気持ちがそう言うのなら、それが正解です。

でも、心のどこかが「ちょっと待って」と言っているなら──その声を、聞き流さないでほしい。あとから戻れない場所に行こうとしている、というアラートかもしれないからです。

「もっと早く知りたかった」と言わせない、それだけが僕の仕事です

僕はこの仕事を、たくさんの人に知ってほしくてやっています。

もちろん、依頼してもらえるとありがたいですが、それ以前に、選択肢があるということ自体を知ってほしい。残すか残さないかは、知ったあとで自分で決めればいい。でも、知らないまま「選べなかった」状態だけは、絶対になくしたいんです。

だからこのコラムを書いていて、こうやって僕の体験談を、できるだけ正直に話しています。誰かが、解体業者の見積書を見ながらこの記事にたどり着いて、「ああ、こういうのもあるのか」と気づいてくれたら、それだけで僕がこの仕事をやっている意味があります。

失われるはずだった家が、
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いま、解体の見積もりを見ているあなたへ

業者から見積書をもらって、金額を眺めていて、なにかひっかかりがある。でも、その「ひっかかり」が何なのか、自分でもよくわからない。

そういう人に、いちばん読んでほしいんです。そのひっかかりは、たぶん「お金」の話じゃありません。「このまま壊してしまっていいのか」という、もう一段深いところからの声です。

立ち止まる時間を、自分に許してあげてください。解体の日程は、ほとんどの場合、数日であれば調整がきくものです。慌てて壊して一生後悔するくらいなら、一週間遅らせて選択肢を確認したほうが、ずっといい。

話を聞くだけで構いません。「撮っておいたほうがいい気がする」──その感覚のままで相談してもらって大丈夫です。

株式会社Leoline代表 畠山 琢

畠山 琢(はたけやま たく)
株式会社Leoline 代表取締役
北海道を拠点に、解体前の住宅・歴史的建造物・乗り物などの空間記録を手がける。JR北海道、北海道新幹線、日本航空大学校、札幌市路面電車など、「二度と同じ状態では撮れない」空間の記録実績多数。「資産を守り、育て、生かす」をミッションに掲げる。
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