家の解体前にやっておくべきこと
完全リスト
なぜ「やるべきことリスト」が必要か――解体前は意外と忙しい
家の解体は「業者に頼んだら勝手に進む」というイメージを持っている人が多いですが、実際は施主側でやるべきことが驚くほど多くあります。手続き、近隣挨拶、補助金申請、インフラ撤去、残置物処分――いずれかが抜けると、解体が進まなくなったり、トラブルや余計な費用が発生したりします。
「やるべきこと」を時系列で並べる意味
個別の作業はそれほど難しくないのですが、「いつまでに何を終わらせるか」が見えないと焦って漏れが出ます。解体日から逆算して、3か月前・2か月前・1か月前・2週間前・1週間前・当日というタイムラインで整理しておくと、抜け漏れを防ぎやすくなります。本記事のリストは、施主側のチェックリストとしてそのまま使えるよう構成しました。
「人に任せきり」が後悔の元
解体業者は「壊すこと」のプロですが、補助金申請や滅失登記、近隣との関係性まで全部はやってくれません。解体業者の仕事と、自分でやるべきことの境目を最初に把握しておくことが大切です。
遠方住みの場合は「現地での密度」を意識
実家から離れて暮らしている方は、現地に行ける回数が限られます。3か月の中で現地訪問を何回計画するか、各訪問で何を済ませるかを最初に決めておくと、無駄足が減ります。本記事では各フェーズの「現地必須タスク」を明示しているので、訪問計画の参考にしてください。
解体3か月前:業者選び・相見積もり・契約
解体3か月前は「お金と業者」を確定させるフェーズです。ここで決めたことが解体全体のコストとスムーズさを左右するので、急がず比較してください。
解体業者を3〜5社から相見積もり
解体費用は業者によって2倍以上の差が出ることもあります。木造2階建て30坪で90万〜200万円、鉄骨造で120万〜250万円、RC造で150万〜400万円が相場ですが、業者によって幅があります。最低3社、できれば5社から相見積もりを取りましょう。同じ条件で見積もりを依頼するため、家の図面・住所・立地(前面道路の幅)・付帯物(ブロック塀・カーポート・庭木)の情報を整理しておくと比較しやすくなります。
建設業許可と産業廃棄物処理の確認
解体工事には「建設業許可」または「解体工事業登録」が必要です。さらに発生する廃材は「産業廃棄物」として適切に処理される必要があります。業者のホームページや見積書で許可番号(例:「東京都知事許可(般-XX)第XXXXX号」)を必ず確認してください。これがない業者は不法投棄リスクが高く、後で施主側に責任が及ぶ可能性があります。
見積もりで「一式」が多い業者は要注意
「解体工事一式 ○○万円」とまとめて記載している見積もりは、後から追加費用が発生しやすい要注意パターンです。本体工事・養生・廃材処分・運搬・諸経費が項目別に分かれている見積もりが信頼できます。「重機回送費」「マニフェスト発行費」「届出費」が別建てで記載されている業者は実務に慣れている指標です。
契約時の必須5項目
契約書には次の5項目を必ず明記してもらいます。①契約解除条件、②追加費用が発生する条件と概算、③廃材の処分先(マニフェスト発行)、④工事保険の有無と補償範囲、⑤近隣トラブル発生時の対応。口約束で進めるとトラブル時に立証できません。契約金は工事前に全額払うのではなく、着手時30%・中間40%・完了時30% といった分割払いが一般的です。
解体2か月前:行政手続き・補助金申請の仕込み
解体2か月前は「お役所まわり」のフェーズです。手続きには時間がかかるものが多いので、早めに動き始めるのが鉄則です。
建設リサイクル法の届出(解体7日前まで)
延床面積80平米以上の建物を解体する場合、解体7日前までに自治体(都道府県知事)への届出が必要です。届出は通常解体業者が代行しますが、施主の押印が必要なので、書類のやり取りに数日かかります。「業者にやってもらえる」と油断せず、進捗を確認しておくこと。
補助金・助成金の申請(自治体による・解体着手前必須)
多くの自治体で老朽化した空き家・特定空き家・危険家屋の解体に対する補助金制度があります。金額は10万〜100万円程度(東京都豊島区は最大200万円、神奈川県横須賀市は最大50万円など)。申請から交付決定まで2〜3か月かかります。最重要点:「解体着手前に申請が必要」な制度がほとんど。解体が始まってからでは間に合わないので、業者選びと並行して自治体の住宅課・都市計画課に相談してください。「補助金 ○○市 空き家」で検索すると見つかります。
境界確定測量(土地売却予定なら必須)
解体時に隣家の壁・塀・配管を傷つけるリスクを減らすため、敷地境界を事前に確認しておきましょう。境界標が見えない場合は、土地家屋調査士に依頼して確定測量を行う選択肢があります。費用は40万〜80万円。これは解体後の土地売却時にも必要になることが多いので、このタイミングで一緒にやっておくと効率的です。
アスベスト調査(2022年〜義務化)
2006年以前に建てられた建物には、アスベストが使われている可能性があります。2022年以降、解体前のアスベスト調査が法令で義務化され、調査結果の届出(事前調査結果報告)が必要になりました。調査費用は5万〜20万円、除去が必要なら別途100万〜500万円。解体業者の見積もりに含まれているか確認してください。
解体1か月前:近隣挨拶・インフラ撤去手配
解体1か月前は「家の周り」を整えるフェーズです。近隣との関係と、ライフラインの撤去手配が中心になります。
近隣への解体挨拶(半径50m目安)
解体工事では、騒音・粉塵・振動・トラックの出入りなどで近隣に迷惑がかかります。工事の1〜2週間前ではなく、1か月前から挨拶回りを始めるのが理想です。両隣・向かい3軒・裏3軒の最低7軒、可能なら半径50m以内のすべての家に、500〜1,000円程度の手土産(タオル、洗剤、お菓子など)を持って訪問してください。挨拶のときに伝えるべきは、解体工事の期間、工事時間(通常8:00〜17:00)、業者の連絡先、養生の有無、トラックの出入り経路です。
電気・ガス・水道・電話の停止手配
解体時に必要なライフラインと、撤去すべきライフラインを整理します。電気は解体時に必要な場合が多いので、解体直前まで残します。プロパンガスは撤去依頼(無料の場合が多い)、都市ガスは閉栓と引き込み管の撤去手配(5,000〜2万円)。水道は解体に水を使うので残します(解体後に閉栓)。電話・インターネット回線は早めに解約と撤去依頼を。光ファイバーは引き込みケーブルの撤去まで頼んでおくと、解体時に業者が困りません。
不用品・残置物の処分計画
家の中に残っている家具・家電・荷物は、解体業者に処分を頼むより、自分で先に処分するほうが圧倒的に安く済みます。解体業者の処分費用は1立米1万〜2万円。家1軒分(5LDK相当)だと残置物処分だけで30万〜50万円の差になります。フリマアプリ、リサイクル店、自治体の粗大ごみ、不用品回収業者など、複数のルートで分担して処分計画を立ててください。
仏壇・神棚・井戸の対応
仏壇・神棚は、お焚き上げ・閉眼供養(魂抜き)を菩提寺や近所のお寺に依頼します。解体当日に間に合うよう、1か月前には予約を入れておくのが安心。お布施は1万〜3万円。井戸がある場合は、お祓いと埋め戻し作業を解体業者と相談。詳しくは後悔しない実家じまいのために解体前にやるべきこと(教科書)に感情面・記録面とあわせて整理しています。
解体2週間前:残置物の処分・最終記録
解体2週間前は「家の中をいよいよ空にする」フェーズです。記録を残すならこのタイミングで実行することが大切です。
残置物の最終処分(解体業者引き渡し前)
このタイミングで、家の中の物はほぼ全部空にしておくのが理想です。残置物処分は1立米1万〜2万円かかるので、自分で処分できるものは粗大ごみや不用品回収で対応してください。冷蔵庫・洗濯機・テレビ・エアコンの「家電リサイクル法」対象品目は、リサイクル料金(5,000〜2万円/品)がかかるので別途処分の手配を。
記録(写真・動画・VR空間記録)の最終実施
家の中を空にする前に、暮らしの名残がある状態で記録を残します。物がなくなった後では「片付いた家」しか残せません。詳しい比較と方法は解体前に残すなら写真?動画?VR?徹底比較(教科書)に整理しているので、自分の状況に合った組み合わせで記録を実行してください。VR業者の予約は1か月前までに済ませておく必要があります。
家族での最後の集合
解体直前に家族で集まる時間を1日でも持つと、後の心の整理がスムーズになります。家の中で写真を撮る、思い出話をする、それぞれの部屋で時間を過ごす――家族の納得感を高める最後の機会です。
解体前の現地最終確認
解体業者と一緒に、現地で最終確認を行います。解体範囲(建物本体だけか、ブロック塀やカーポートも含むか)、立木の伐採の有無、井戸や浄化槽の処置、廃材の搬出経路。直前に「これは含まれていなかった」となると、追加費用や工期遅延につながります。
解体1週間前〜当日:立ち会い・滅失登記
解体1週間前と当日は「家との別れ」と「実務の最終フェーズ」が重なります。実務的にも感情的にも、密度の濃い時期です。
近隣への直前挨拶
1か月前にした挨拶のおさらいとして、解体直前に再度挨拶するのがマナーです。「来週から解体が始まります。ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします」と伝えるだけで、近隣の心理的な準備が整います。両隣と向かいの3軒だけでも構いません。
「家との最後の時間」を取る
解体直前に1人または家族で、家の中をゆっくり歩く時間を持つことを推奨します。これは「やるべきこと」ではなく「できること」ですが、後の心の整理に大きく影響します。詳しくは実家の解体が寂しい|心の整え方と後悔しないための準備(教科書)を参照。
解体当日の立ち会い
解体当日は施主または家族の立ち会いが望ましいです。最低でも工事開始時と完了時には現地に行けるよう、仕事の調整をしてください。立ち会えない場合は、信頼できる家族や、解体業者と日々連絡を取れる体制を整えておくこと。当日朝の最初の立ち会いで、改めて解体範囲を業者と確認、「ここは残してほしい」「これは持ち帰りたい」という最後の意思確認をします。
解体完了時:建物滅失証明書の受領
解体完了時に業者から「建物滅失証明書」をもらいます。これは滅失登記に必須の書類なので紛失しないよう保管してください。あわせて、廃材処分の領収書(産業廃棄物処理票・マニフェスト)も受け取っておくと、後で「適切に処分された証明」として活用できます。
建物滅失登記(解体後1か月以内)
解体完了から1か月以内に、法務局で建物滅失登記を行います。申請しないと建物分の固定資産税が課税され続ける、土地売却時に手続きが面倒になる、相続登記とリンクして煩雑になる、など不利益が大きいので必ず期限内に。自分で申請すると無料、土地家屋調査士に依頼すると4万〜8万円。必要書類は、建物滅失証明書・印鑑証明・登記事項証明書・申請書。
固定資産税の確認
解体後は「住宅用地の特例」が外れて、土地の固定資産税が3〜6倍に上がります。解体年度の翌年度(1月1日時点で更地)から適用されるので、翌年の固定資産税通知書が来たら金額を確認してください。場合によっては年間10万〜30万円程度上がるので、土地の活用方針を早めに決めましょう。
遠方住みのための「現地訪問計画」
実家から離れて暮らしている場合、解体までの3か月で現地訪問を何回計画するかが重要です。各訪問の役割を整理します。
訪問1(3か月前):業者選び・現地下見
解体業者の現地調査に立ち会う。3〜5社の現地見積もりを1〜2日に集中させると効率的。同時に近隣の状況も確認し、挨拶ルートを下調べ。
訪問2(1か月前):近隣挨拶+残置物の判断
1か月前の挨拶回りに合わせて、家の中の物を「持ち帰る・売る・捨てる・残す」に仕分け。家族で集まれる週末を選ぶと、複数人で短時間に進められます。
訪問3(2週間前):記録撮影+最終整理
VR業者を呼ぶ日と合わせて、写真・動画の撮影、家族での最後の時間。物の搬出も同時並行で進める。1泊2日が目安。
訪問4(解体当日):立ち会い
解体開始時と完了時に立ち会う。当日帰りでも可能ですが、業者との打ち合わせや滅失証明書の受領があるので、1泊する方が安心です。
遠隔でできるタスクの活用
業者見積もりの比較、補助金書類の作成、行政への問い合わせ、近隣挨拶の手土産注文、滅失登記の書類準備など、多くのタスクは遠隔で進められます。現地訪問はチェックポイントとして使い、それ以外の時間で書類仕事を進めるのが効率的です。
やりがちな失敗5つと回避策
解体前後で「やってしまった」と後悔されることの多いパターンを、5つに整理します。事前に知っておくだけで、ほとんど回避できます。
失敗1:補助金申請が間に合わなかった
「解体着手前に申請」が必須なのに、業者と契約した後で申請に気づくケースが頻発します。補助金は10万〜100万円規模なので、もらい損ねるダメージは大きい。回避策:業者選びの前か並行して、自治体の補助金制度を調べる。「補助金 ○○市 空き家」で検索+住宅課に電話で確認。
失敗2:残置物の処分を業者に丸投げして高額請求
家の中の家具・家電をすべて解体業者に処分してもらうと、想定の3〜5倍の費用になることがあります。家1軒分の残置物処分で30万〜50万円というケースも。回避策:解体2週間前までに自分で粗大ごみ・不用品回収・リサイクル業者を活用して、可能な限り片付けておく。
失敗3:滅失登記を忘れて固定資産税が課税され続けた
解体後の滅失登記は、忘れていてもすぐに気づきません。翌年度・翌々年度の固定資産税通知が来て初めて気づくことが多く、場合によっては数年分の建物分課税を払うことに。回避策:解体完了時に「建物滅失証明書を受領→1か月以内に法務局で滅失登記」をルーティン化する。
失敗4:相見積もりを取らず最初の業者で決めた
1社だけの見積もりで契約すると、相場より100万円以上高い金額を払うケースがあります。「親戚が紹介してくれたから」「電話の感じが良かったから」という理由で1社決めしないこと。回避策:必ず3〜5社から相見積もり。価格と説明の丁寧さで比較する。
失敗5:近隣挨拶を直前にして関係悪化
解体3〜5日前に慌てて挨拶に行くと、「もっと早く言ってくれれば」と近隣の心象が悪化します。工事中の苦情が増え、業者の作業に支障が出ることも。回避策:解体1か月前から挨拶を始め、直前にもう一度確認の挨拶を入れる二段構え。
まとめ:完全リストで「抜け漏れゼロ」を作る
家の解体前にやるべきことは、3か月前から当日まで時系列で整理すると抜け漏れなく進められます。本記事では6つのフェーズ――3か月前(業者選び)/2か月前(行政手続き)/1か月前(近隣挨拶・インフラ)/2週間前(残置物処分・記録)/1週間前〜当日(立ち会い・滅失登記)――に分けて完全リストを提示しました。
解体前のフェーズで特に重要なのは、「補助金申請の期限」「残置物の自己処分」「滅失登記」の3点です。この3つは見落としやすく、それぞれ数十万円規模の損失につながります。逆に言えば、この3点さえ押さえておけば、ほとんどの大きな後悔は防げます。
遠方住みの方は、3か月で4回の訪問計画(3か月前の下見、1か月前の挨拶+残置物、2週間前の記録、当日の立ち会い)を意識すると、無駄足が減ります。書類仕事は遠隔で進め、現地訪問はチェックポイントとして使うのが効率的です。
本記事は実務リストに特化していますが、感情面の整理や記録の方法は別途、関連教科書をあわせて読むと「家を残す・閉じる」の全体像がつかめます。実家の解体に伴う寂しさの整え方は実家の解体が寂しい(教科書)、家を残す方法は家の思い出を残す方法まとめ(教科書)を参照してください。
このページに辿り着いた方は、すでに「抜け漏れなく進めたい」という気持ちで情報を集めています。その姿勢があれば、解体は確実にスムーズに進みます。あとはこのリストを上から順に確認しながら、自分の家の状況に合わせて取捨選択して取り組んでください。「いつ、何を、誰が」を最初に決めておくだけで、解体前後の数か月間は驚くほど整います。
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監修:畠山 琢(株式会社Leoline 代表取締役)/制作:ハウストーリー編集部

